北園克衛
2023.5.11 - 5.28
2023年5月11日(木) – 5月28日(日)の期間、「北園克衛小展 ──ミステリの遊歩者」を開催いたします。
北園克衛(1902-1978)は二十世紀という近代芸術の洪水のただ中を生きて、実験的な詩を書きつづけた詩人でした。新取の姿勢と感覚は文学にとどまることなく絵画やデザインにも発揮され、リトルマガジンがメディアの急先峰だった時代を華々しく彩ることになりました。
1950年代から北園克衛は翻訳ミステリの世界にかかわります。ヒッチコックなどサスペンス映画の公開も相次ぎ、それまで日本では希薄だった’ミステリ’の世界観をつよく意識するようになります。探偵小説と呼ばれていた日本の湿った雰囲気とはちがう、人工的な夜に交わされる真実味のないせりふが浮遊する虚構世界は北園克衛にとって居心地のいい超現実だったようです。
プラスティック・ポエムと呼ばれている独特の写真にただよう謎めいた不吉な様子にも、ミステリ小説の世界観がひそんでいるようにみえます。本展示ではプラスティック・ポエムにあわせて最晩年に多く手がけた早川書房のブックデザインを展示し、詩人が空想していた「翻訳された夜」の空気を垣間みるこころみになります。
どうぞこの機会にご高覧ください。
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